胃と腸のこと

『消化・吸収』ざっくり編

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いくら「腸が健康のカギだ」と言っても、腸だけに気をかけていても当然だめなわけで。

なぜなら腸は単なる人体の一部なわけですから。

でも私たちは母親からこの世界へ生れ出た瞬間から、この肉体を生かすには、とにかく「食べる」という行為で食物からエネルギーを得て生きるしかない。

食べるということでしか私たちは成長もしませんし、そもそも食べなければ生きることができません。

ただ、食べることで元気に毎日やりたいことができる、という反面、心身を不調にすることも病気にすることもできるのが、この「食べる」ということなんですよね。

それというのも、「食べる」食材、「食べる」ためにしている行動や習慣で、体を作り、細胞一つ一つが作り変えられているから。それは良い方にも悪い方にも。

ということで、食べると体の中はいったいどうなってるの?なにが起こってるの?ということを、ざっくりまとめてみようと思います。

消化のあらすじ

まず食物が入る体の入り口は「口」。そして出口は「肛門」です。

この入口から出口の管は、形は変化しますが、入り口から出口までが1本の管であるということを頭に置いておくことが重要になります。

そしてこの管は、体の内側にあるようですが、実は外側とも言える。つまり外界と接触する場所である、ということになるんですね。

さてまず食べ物が「口」に入ると、次は「食道」を通ります。食道を通り過ぎると「胃」に入り、ここで3~4時間かけて消化が行われます。

そして胃で消化されたものは徐々に小腸へと送り出されていきますが、まずは小腸の入り口、30cmほどの「十二指腸」(ここで「膵臓」「胆のう」が仕事をします)で一気に消化が進み、さらに消化物は先に送られ、小腸の大部分を占める「空腸」「回腸」において、およそ8時間ほどかけて消化物をさらに細かく分解し、栄養素として吸収します。

実は水と栄養の吸収の8割はこの空腸と回腸(小腸)で行われます。そして吸収された栄養物は、いったん「肝臓」へ送られます。

その後、小腸で吸収できなかった残りの栄養素と水分を約15~6時間ほどかけながら、「盲腸」「結腸」「直腸」という大腸で吸収し、不要な消化物は便となり「肛門」から排出されます。

約9メートルの1本の管ですが、これだけの区分があり、24時間から72時間かけて「食物」とされる外界のものが、私たちの体の一部となり、そしてエネルギーへと変換されていく。

私たちのお腹の中ではこれが当然のように毎日毎食行われていますが、実に神秘的なことだと、私は感じます。

消化には2つの方法がある

  1. 物理的消化
  2. 化学的消化

1.物理的消化とは

食物を消化するためにまず口の中で歯と舌を使い「咀嚼」をしますね。かみ砕き細かくする。そして飲み込むと食道を通る時に「蠕動運動」で胃へ送っていきます。ただ落ちていくわけではないのです。

そして胃へ入ると「撹拌」という作業が行われ、ここで「粥状」というドロドロの状態まで分解します。食べ物が胃に入ることで胃から腸の方へ、また「蠕動運動」が始まります。

ちなみに「蠕動運動」というものは、食べ物が入ることで起こる反射です。反射というのは神経を介して自律的に起こっていますので、気づかないところで内臓というのは常に脳と連携して働いている、ということが言えます。

2.化学的消化とは

さて、物理的消化で食べ物を細かくしていきますが、それだけでは最終的に小腸にある小さな小さな器官の「絨毛」というところの血管の壁を、栄養素として通すことはできません。

そこで各消化器官で、液体を分泌することでその液体の成分と反応させて、さらに細かく分解していくということを「化学的消化」と言います。

これら2つの方法を使い、私たちが食べたものは体の血肉となっていくわけなのです。

消化酵素という超優秀な液体

化学的消化で使われる液体を「消化酵素」といいます。

それらは長い消化器官の中で、実によくできたシステムのもと分泌されている超優秀な液体と言えます。

まず口では唾液が、胃では胃液が、十二指腸では近くにある膵臓と胆のうから膵液胆汁、そしてその先の空腸・回腸からは腸液が、食べ物が口に入り、咀嚼し、飲み込むという「食べる」ことを始めると、各場所で反射が起き、それらの消化酵素が分泌され始めるのです。勝手に。

そしてもともと固形だった食物が、小さな小さな分子にまで分解される。これをほんの8時間ほどでやってしまうのです。

そのはたらきは、この消化酵素なしではありえない。

それだけすごいことが、私たちの体の中では常に勝手に行われているんですから、たまげたものですね。

そして小さな分子へと分解された栄養物や水分は、空腸と回腸でそのほとんどを吸収し、血管やリンパ管を通していったん肝臓へ運び、エネルギーとして使われたり、体を構成する養分として使われていくことになるのです

そして排泄へ

いよいよ最終章。大腸に到着です。

超優秀な消化酵素のおかげで、食べ物は栄養となり小腸で吸収されていきました。しかしまだ吸収しきれなかった栄養分や水分を大腸でしっかり吸収しながら、ゆっくり時間をかけ、残渣物を固形化していきます

15~6時間かけ、蠕動運動により少しずつ移動しながら、残渣物は出口へと向かいます。

便となる残渣物は200gほどと言われていますが、これは食事の内容によって変わりますし、排便回数も変わってきます。

昔は400gほどあったという便の量、現在は半分ほどになっているのだとか。これは現代の生活の変化から、腸内の環境が変化してきているということなのでしょうね。

日頃あたりまえのように行っていること、「食べる」。

この行為により、私たちの体は自律的に、このようにせっせと働いてくれているんですね。そして確実に、食べたものが体を作り、食べるということが、体の機能を良くも悪くも導いている。

体調を崩すと健康のありがたみをしみじみ感じますが、毎日毎食、こうして働いてくれている内臓さんたちに、改めて感謝したいものですね。

この記事を書いた人
有賀 理香
鍼灸マッサージ師。徳島県阿南市からいのちのこと、生きることを心の底から楽しむ人生を発信。
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